曲名探偵団

篠崎正嗣 （作曲）

孤独で感情的に不安定な10代の少女が、オンラインで理想の愛を見つけたように思えた。 しかしその理想の男は連続殺人犯でもあった。少女の心は「愛」と「生と死」の間をさまよい続 ける。

インターネットが普及した頃から世の中の仕組みが徐々に変化していった。人の「愛」を求めるということに 変わりはないが、そのプロセスは徐々に変化していったように思える。身近な人とのコミュニケーションが 「恐れ」と変化し始めていく。そしてコミュニケーション手段はアナログからデジタルへと移行していった。

この映画「僕の名前はルシアン」はそういう若者たちがネットで知らないもの同士で仲間を求めるようになった。 「自殺」への願望？　共有したいものは願望だけだったのかもしれない。

「僕の名前はルシアン」はネット社会の中でしか「愛を求める」ことしかできない子供たちのストーリーである。 実際に起こった事件を元にイマジネーションを使ってストーリーに仕立てたファンタシーの世界だ。

前半の不思議なイメージが大山の世界観の特徴を表しており、ストーリーがきちんと構成できて いる、最後まで飽きさせることのない長編映画。特にクライマックスが秀逸だ。 ジャーナリスティックなテーマを大山のアート感覚で作った作品だ。テイストが特異で ユニークな作品である。

大山は写真家でありフィルムメーカーだ。彼女はアヴァンギャルドな世界が好きであり、 特にこの作品中ではアートとジャーナリズムをコンバインしている。彼女は常に自分の特徴 を作品に反映させることに意識している。

2022年秋公開。